食後の歯磨きの正しいタイミングはいつ?
- 小児矯正
監修歯科医師
鹿児島明和院
社本 光央 先生
“ママとこどものはいしゃさん”では、親御さんから「食後は、すぐに歯磨きをしないほうがいいですか?」という質問を受けることがあります。どうやら、新聞やテレビを通して、あたかも“食後すぐの歯磨きは歯に良くない”というような報道が伝えられたことがきっかけとなり、子どもの歯磨きのタイミングについて考える親御さんが増えたようです。
親御さんたち自身が、子どものころから「食後はすぐに歯を磨きなさい」と言われてきたからこそ、その報道は、多くの人にインパクトを与えたことでしょう。
むし歯と酸蝕症の違い
結論からいうと、むし歯予防の観点からは、食後すぐに歯を磨いても問題ありません。なぜなら、子どもの歯磨きの目的は、歯垢(プラーク)を除去することはもちろん、それ以上に、歯磨きの習慣を身に着けることが大切だからです。
また、この報道は、実験的に酸性炭酸飲料に歯の“象牙質”を漬け、それを再び口の中に戻した後、歯磨きの開始時間により、どの程度酸の浸透に違いが出るかを調べた論文がもととなっています。実は、これは「酸蝕症(さんしょくしょう)」という、むし歯とは異なる病気の実験なのです。“歯垢の中の細菌によって産生された酸が原因となるむし歯”と、“酸性の飲食物が直接歯を溶かす酸蝕症”とは、そもそもメカニズムが違います。
さらに、この実験と実際の口の中で異なるのは、歯は象牙質ではなく、酸に対する抵抗性の高い“エナメル質”に覆われているということです。
食後すぐの歯磨きを習慣づけよう
唾液で潤っている歯の表面は“ペリクル”と呼ばれる膜で覆われています。そのペリクルには、歯を酸から守る機能が備わっていて、酸性飲料の頻繁な摂取でもない限り、すぐには歯が溶けないようになっています。
通常の食事なら、食後は早めに歯を磨き、歯垢とその中の細菌を取り除いて、エナメル質が溶けてしまわないようにすることのほうが大切です。
食後の歯磨きと、可能ならおやつの後の歯磨きも習慣づけましょう。子どもの機嫌が悪い時や、外出先で歯磨きが難しいようであれば、水でぶくぶくうがいをさせるだけでもかまいません。ただし、うがいだけですべてをキレイにすることは難しいので、少なくとも1日1回はしっかり歯磨きするようにしましょう。
また、永久歯が生えそろうまでは仕上げ磨きをしてあげることが理想です。学年が上がってくると、どうしても本人に任せがちになりますが、“磨いていること”と“磨けていること”は違うので、ぜひ日々のコミュニケーションもかねて、仕上げ磨きの時間を作ってあげてください。
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